万延元年、春。
桂小五郎は有備館用掛として江戸の長州藩邸に滞在していた。
身分に似合わぬ気さくさで誰にでも分け隔てなく接する桂と藩邸女中であるあなたは、他愛もない言葉を重ね、心を通わせていく。
だが、やがてあなたが江戸を離れる日が訪れた。それからおよそ二年後。
雨の降りしきる京の都で、あなたは桂と偶然の再会を果たす。
ずぶ濡れの桂に傘を差し出し、自身の働く料亭へと招き入れたあなた。
懐かしい思い出話に花を咲かせるうち、いつしか雨は上がっていた。
雨宿りをきっかけに、桂は度々店へと足を運ぶようになるが、
そこに桂を追う新選組の影が近づいていた――。

桂小五郎



思慮深く常に穏やかだが、柔和な微笑の奥には密かな毒が隠されていることも。
その細身の身体からは一見想像できないが、江戸での剣術修行時代には剣豪として名を馳せた程の腕前。
吉田松陰は師であると同時に、友人でもある。